プロフィール
暗闇の空間で、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って日常を体験するエンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドを務めている村松美紀さん。
段々と視力が低下し、高校1年生で全盲となりました。趣味は声楽で、3ヶ月に一回、ライブハウスで演奏を行います。
聴覚・触覚・嗅覚・味覚で楽しんだ、里山での古民家体験調査
群馬県沼田市にある里山・古語父での1泊2日の里山体験ツアーが、初めてのモニター調査でした。ミライロ・リサーチのモニターに登録している夫から、視覚障害者の女性限定で面白そうな調査があるから行ってみたら?と勧められたことがきっかけで、仲の良い友人たちを誘って参加しました。その後、私もモニターに登録しました。
この調査は、今後もきっと忘れることのない素晴らしい思い出となりました。
初日は、160年の歴史を持つ古民家や周辺を見学した後、子牛へのミルクあげ、牛の乳搾り、野菜の収穫、うどん作りを体験しました。招いてくださった古語父の里山ぐらし推進会の皆さんは、私たちを誘導しながら、丁寧に解説や指導をしてくださいました。子牛のミルク上げでは、獣医さんが近くで見守ってくれたので、歯や頭、体に怖がらずに触ることができました。また、うどん作りでは、生地を機械に入れて伸ばすのですが、それがバーキンスブレイラーという、視覚障害者が使う点字ライプライターに似ていて、親近感がありました。うどんを一から作り、食べられたことが嬉しかったです。
2日目は、りんご狩りを体験しました。木に実った果実の表面に付着している、べとべとした蜜を触りながら、好きなものを選びました。甘くてジューシーで、とても美味しかったです。初めてのことばかりで、不安な気持ちが大きかったのですが、古語父の住民の皆さんやミライロの皆さんが、私たちを温かく迎えいれてくださり安心して過ごせました。
一般的なツアーですと、ここまで配慮していただくことはありません。もっと詳しい情報を知りたいなと思っていても、迷惑をかけたくない気持ちから聞くことを我慢することが多いです。このツアーが具体化したら、多くの視覚障害者に里山体験をしてもらいたいと思います。新たな世界があることを知ってほしいです。そして私も、また古語父に帰ってきたいです。
自分の感じているバリアを、今後も伝えていきたい
普段感じているバリアを社会に届けられること、バリアの解消方法について一緒に考えてくれる人がいることが本当に嬉しいです。ミライロ・リサーチに関わり、様々な方々が、私たちの生活を少しでも良くしようと考え、動いてくださっていることに気づきました。
正直、最初は、「自分の意見が本当に役に立つのかな?」「こんな些細なことでも受け入れてもらえるかな?」と少し不安を感じていました。ですが、調査で、「私には気づかない視点を教えてもらえるので勉強になる」と言ってもらえた時、自分自身の感じている不自由な視点が、誰かの役に立つことを知りました。
伝えなければ誰にも届きません。黙っていても何も始まりません。どんな障害特性の方でも、自身が感じている不自由な体験を伝えることで、それは大きな価値に繋がります。「私の意見でも価値になるかな?」と感じている方がいたら、自分が感じている不自由な体験を率直に伝えてほしいです。
自分の新たな一面を知り、表現することができる音楽
「歌をうたうこと」が一番の趣味です。3ヶ月に一回、ライブハウスに出演しています。曲を作って披露することも、人気歌手の曲をカバーすることもあります。以前、日比谷で開催したチャレンジザフェスティバルに参加し、車いすユーザー、聴覚障害のある方、ダウン症の方など多様な方々と共演したことは思い出の一つです。
歌っている時、自分の新たな一面を知ることができます。リズムや音を合わせることの楽しさ、皆に喜んでもらえることの嬉しさなど、色々な感情を体感できることが面白いです。大好きな歌を、今後も楽しく続けていきたいです。